■吹付けアスベストの劣化状態把握の診断
この診断は、処理工事の要否とその工法を選定するためのものです。現地調査において吹付けアスベストの劣化状態、粉塵濃度を把握し、現地や周辺の状況を勘案して、最適な工法を診断します。調査は以下の条件で実施します。
1)吹付けアスベストの劣化状態の種類を目視にて判定します。
| 劣化・損傷の状態図 | 劣化・損傷の定義 |
| 表面の毛羽立ち | 吹付けアスベスト層の表層部で結合材の劣化などによってアスベスト繊維が毛羽立っているもの |
| 繊維のくずれ | 「毛羽立ち」の程度からさらに劣化が進行し、表層または表層下部の繊維がほぐれて荒れた状態になっているもの |
| 垂下がり | 吹付けアスベスト層の一部分が劣化・外力等によって層外へ垂れ下がっているもの |
| 下地からの浮き・はがれ | アスベスト層の下地への付着力が低下することによって、アスベスト層と下地との間に隙間・剥離が見られるもの |
| 局部的損傷・欠損 | 人為的または経時変化によって、アスベスト層の表面、層自体の層間・下地間で生じた局部的な凹凸、剥落、剥離 |
| 層の損傷・欠損 | 人為的または経時変化によって生じた施工面のほぼ全面にわたる凹凸、剥落、剥離 |
※出典:既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説(発行:日本建築センター)
2)劣化状態の診断を対象物から1m以内に接近し目視で行い判定します。
竣工時と明確な差が無く、粉じんの発生も認められない場合は、「維持保全計画書」を作成します。計画書には診断結果も添付します。
1)で記載の劣化がありと診断された場合は、処理に必要な調査を実施し、アスベスト粉じん飛散防止処理工事の工法を選定します。
■粉じん濃度の測定調査
吹付けアスベストが施工されている現場では、アスベスト粉じんが飛散している可能性があります。この場合、参考としてアスベスト粉じん濃度の測定を行うことが望ましいとされています。
1)測定の概要
所定の空気量を孔径0.8μmのメンブランフィルタで捕集し、捕集したものを透明化処理したあと、位相差顕微鏡あるいは位相差分散顕微鏡で所定の計数ルールに基づき、計数して濃度を求めます。所定の空気量は、作業環境の場合、25mmメンブランフィルタで1測点につき、1リットル/分で20分、アスベスト製造・加工工場の敷地境界線の場合は、47mmメンブランフィルタで1測点につき、10リットル/分で4時間捕集となっています。
2)位相差顕微鏡による計数分析結果での留意事項
試料採取したメンブランフィルタを位相差顕微鏡を用いて計数分析する場合は、次の点に留意しなければなりません。
- 位相差顕微鏡による計数分析は、繊維形態観察により計数しているので、得られた濃度はアスベスト繊維以外の繊維を含む総繊維数の濃度となる。
- ロックウールを含んでいる吹付けアスベスト施工場所は、ロックウールも飛散している可能性があるので、総繊維数濃度に、ロックウール等の無機質繊維濃度も含まれている点に留意。
- 室内には、ハウスダストのような有機繊維も浮遊している可能性もあるので、総繊維数濃度に、有機湿繊維濃度も含まれている点に留意。
3)分析機関の選定
前項の【現地調査での試料サンプリングの分析】の[分析機関の選定]を参照願います。
4)アスベスト粉じん濃度の判定
アスベスト粉じん濃度に関しては、作業環境における基準値(150f/リットル)およびアスベストを取り扱う事業所の敷地境界における基準値(10f/リットル)のみ規定されており、室内における濃度は規定されていません。海外においても明確な基準を設けている国はほとんどありません。現状では、測定方法によって濃度が大きく異なるため、明確な基準が設定できないなどの理由により、測定データから直ちにアスベスト飛散防止処理工事の要否を判断できない状況にあります。
■現地状況の確認調査
現地の状況、周辺の状況等の調査については、以下のような項目について確認が必要です。
1)吹付けアスベストへのアクセスの可能性
狭小部に施工された吹付けアスベストや、常時通電状態にある電気設備が共存している吹付けアスベスト等について確認します。これたに対しては除去工法が適用困難だからです。
2)吹付けアスベストへの曝露の可能性
吹付けアスベストに建物使用者が接近して粉じんを曝露する可能性があるかどうかを確認するため、当該室内の使用頻度や使用目的、内容等を確認する必要があります。
3)吹付けアスベストの飛散の可能性
空調等を経由してアスベスト粉じんが居室や屋外に飛散する可能性があるかどうかを確認する必要があります。
■処理工法にあたっての選定条件
調査の結果アスベストが存在すると判定された場合には、どの様な処理工法を選択するかを検討する必要があります。以下にアスベストの状態によって適用な可能な工法の条件を提示いたします。
処理工法の選定にあたっての検討条件:(1)既存の吹付けアスベストの状態
| 既存の吹付けアスベストの状態 |
| | @ 劣化・損傷の程度 | A 下地との接着が良好でない場合 | B 劣化の進行が予想される場合 | C 工事後、使用・利用者が接触しうる場合 |
| 除去工法 | 適用可 | 適用可 | 適用可 | 適用可 | 適用可 | 適用可 |
| 封じ込め工法 | 適用不可 | 適用可※2 | 適用不可 | 条件付適用可 ※4 | 条件付適用可 ※3 | 条件付適用可 ※5 |
| 囲い込み工法 | 条件付適用可 ※1 | 適用可※2 | 条件付適用可 ※4 | 適用可 ※3 | 条件付適用可 ※3 | 適用可 |
※1.補修および粉じん飛散防止処理剤の散布が必要。
※2.必要により補修を行う。
※3.原因を除去することによって、適用可能。
※4.場合により下地および吹付けアスベストの補修が必要。また、付着強さの確認が必要。
※5.耐衝撃性を確保することが前提。
|
※出典:既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説(発行:日本建築センター)
|